2025年6月30日にコンサル生限定で開催した
【元問屋が答える質疑回答会】
のアーカイブ動画(1時間47分)を、AIを活用して議事録としてまとめたものです。
ゲストスピーカー:K氏
一次卸業者に約20年間従事し、主にバイヤー業務やメーカーとの取引を担当。
現在は物流コンサルティングの会社に勤めながら、うちの業務に携わってくれています。
議事録
①卸業者が抱える悩みや「面倒」と感じること
卸業者が取引において経験する悩みや面倒だと感じることは、主に以下の点に集約されます。
- 入金の遅延:
約束した期日に入金が遅れることは、卸業者にとって信用問題に直結します。
入金が滞ると「ここは大丈夫か」という不安が生じ、「売上を上げるな」という指示が出る可能性すらあります。
- 過剰な見積もり依頼:
一度に100件もの見積もり依頼が来ると、各メーカーへの確認や自社価格の調整が必要となり、非常に手間がかかるため「面倒」と感じ、後回しにされがちです。
- 売上規模による優先順位:
顧客の売上規模は、卸業者にとって優先順位の重要な指標となります。
売上規模が小さい顧客の問い合わせは、意図せず後回しにされる可能性があります。
これは取引をしないという意味ではなく、仕事の優先順位の問題です。
②卸業者との関係性を深め、優先順位を上げるには
卸業者に優先してもらい、良好な関係を築くためには、以下の点が重要です。
- 売上の実績と目標の提示:
売上規模が大きい顧客は、卸業者も積極的に対応します。
新規取引の場合、月間の売上目標として1000万円程度のビジョンを伝えることで、卸業者は「一緒に作っていこう」という意欲を持ちやすいです。
月10万円~20万円といった規模では、残念ながら積極的に取り組んでもらいにくい可能性があります。
- 上長(支店長クラスなど)との関係構築:
担当営業レベルだけでなく、その上司(支店長クラスなど)と面識を持つことが重要です。
上層部があなたの会社を認識していれば、担当営業の対応状況が問われることがあり、結果として対応が改善されることがあります。
・アプローチ方法: 最初は担当者を通じて「一度ご挨拶させていただけませんか」と打診するのが良いでしょう。
・ビジョン共有: 上層部との面談の機会を得た際は、具体的な売上目標やビジョンを伝えることが非常に重要です。
- 行動で示すことの重要性:
ビジョンを伝えた後の*1〜2ヶ月間の「ムーブ(行動)」*が極めて重要です。具体的な行動と実績が伴わなければ、優先順位は再び下がってしまいます。
- 対面でのコミュニケーション:
卸業者とのコミュニケーションは、メールや電話よりも対面での直接の会話が推奨されます。
対面であれば「熱量」が伝わりやすく、交渉もスムーズに進みやすいです。
また、予期せぬ会話の中から新たな商機が生まれることもあります。
➔担当者も人間であるため、人間関係が良好であれば「この人のためにメーカーと交渉してあげよう」という気持ちになる可能性はあります。
- 問い合わせの調整と具体性:
・月に1〜2回程度、まとめて問い合わせを行うなど、問い合わせの頻度を調整することで、卸業者の負担を減らせます。
・見積もり依頼の際は、卸業者が得意なメーカーや商品について事前にすり合わせを行い、具体的な商品名や希望価格を提示することで、回答のスムーズさが増します。
漠然とした多数のメーカーリストを送るよりも、効果的です。
③新規取引開始時のアプローチとECへの印象
✅ 新規問い合わせ時の効果的なアプローチ
「問い合わせをしても返信すら来ない」という問題に対するアドバイスです。
- 電話での連絡を最優先:
問い合わせフォームやメールでの連絡は、スパムと判断され無視される可能性が高いです。
直接電話をかけ、責任者(所長や支店長クラス)に繋いでもらうのが最も手っ取り早いです。
営業担当者は自分の仕事が増えるだけと感じ、新規対応に消極的になりがちです。
- 意思決定権のある人物と話す:
営業担当レベルでは取引を決定できないため、意思決定権を持つ人物と直接話すことが重要です。
- 現金取引や預かり金の提案:
新規取引で信用がない場合、先に入金したり、預かり金(例えば仕入れ予定額の2ヶ月分など)を提示しましょう。
卸業者側の「きちんと回収できるか」という不安を払拭し、取引開始のハードルを下げることができます。
✅卸業者のEC販売に対する印象
卸業者のEC販売に対する印象は、以下の通りです。
- 総じて好意的かつ関心が高い:
卸業者はEC販売に対して非常に強い関心を持っています。
特に実店舗の売上が厳しい現状において、ECは今後の成長分野として認識されています。
- 価格競争への懸念:
一部のメーカーは、ECでの販売による価格崩れを懸念する場合があります。
しかし、これは商品やメーカーによって異なり、協力的なメーカーも存在します。
- ECの知識不足:
卸業者はEC市場の潜在的な売上規模を十分に理解していないことが多いです。
ECでどれだけ売れるか、どのように売るのかを具体的に説明することで、彼らの興味を引き、取引を有利に進めることができます。
✅個人事業主としての取引
個人事業主が卸業者やメーカーに断られるケースは存在しますが、それが唯一の原因ではないことが多いです。
- 回収可能性と信用性:
卸業者にとって最も重要なのは、売掛金の「回収」が確実にできるか、そして取引相手の**「信用性」**です。
- 与信の構築:
法人化が与信構築の一助となることはありますが、必ずしも法人である必要はありません。
前述の先入金や保証金の提示、あるいは現金取引など、他の方法でも信用を築くことは可能です。
④利益の取れる商品と得意ジャンル
✅ECにおける低利益率と価格崩れ
「Amazonなどのネット通販ではそもそも利益が取れるものが少ない」「高確率で値崩れする」という懸念については、以下の点が挙げられます。
- 利益商品の割合は低いのが一般的:
見積もり依頼を出した商品(例:100商品)のうち、実際に利益が取れるのは2〜3割、あるいは1割程度であることが普通です。
全ての、あるいは大半の商品が利益になるわけではありません。
- 得意なメーカーからの仕入れ:
卸業者が得意とするメーカーや、条件の良い商品に絞って仕入れを行うことで、利益が出る商品の割合は格段に上がります。
- 価格崩れの真因:
直接卸業者から仕入れた商品が急激に値崩れすることは稀です。
値崩れは、多くの場合、同じ卸業者が多数の競合販売者に同じ商品を卸している(Amazon本体が販売している場合など)ために起こります。
容易に繋がれる卸業者ほど、このような多販路供給を行っている傾向があります。
✅繋がりやすいジャンルとニッチ戦略
個人事業主にとってハードルの低い卸業者のジャンルについてです。
- 「低い」卸業者ジャンルは明確にはない:
特定のジャンルだけが極端にハードルが低いということはありません。
- 繋がりやすい「商材カテゴリー」:
経験値上、食品よりも繋がりやすいと言われるのは、日用雑貨や美容・化粧品などです。
これらの分野は、取り扱い商材や卸業者・メーカーの数が非常に多いため、選択肢が広いです。
- 人気ジャンルの課題:
これらの「繋がりやすい」とされるジャンルは、同時にライバルセラーも多いというデメリットがあります。
また、実店舗でのセール品やせどり品との区別がつきにくく、仕入れ価格の判断が難しい場合があります。
- ニッチジャンルの可能性:
あえてニッチなジャンルを狙うことも有効です。
ニッチな市場では、深く掘り下げているライバルが少ないため、競争が激しくない可能性があります。
ただし、その分、対応する卸業者やメーカーの数も少なくなるため、見つけ出す手間がかかるのが課題です。
⑤まとめ:成功への鍵
座談会全体を通しての総評として、卸業者との取引で成功するための鍵は、以下の点にあると言えます。
- 過度に考えすぎない:
特に新規取引の場合、あれこれ考えすぎて硬直するよりも、まず行動することが大切です。
- 熱意と具体的なビジョンの提示:
「どれくらいの規模を目指しているのか」という熱意のこもったビジョンを明確に伝えましょう。
漠然とした話ではなく、「この商品ならこれくらいの価格でこれだけ売れる」といった具体的な提案を心がけてください。
- 積極的に質問する姿勢:
卸業者に「どうしたらもっと円滑に進められますか?」と積極的に質問し、ヒアリングを行うことが重要です。
疑問を抱えたままにせず、直接コミュニケーションを図りましょう。
- 実績と行動による信頼構築:
最終的には、提示したビジョンに対する実際の売上や仕入れ実績が最も重要です。
言葉だけでなく、行動で示すことで、卸業者からの信頼と優先順位を勝ち取ることができます。
- 一次卸業者を狙う:
規模の小さい二次・三次卸業者から始めるのではなく、一次卸業者との取引を積極的に目指すべきです。
一次卸業者との取引の方が、より良い価格で商品を仕入れることができ、長期的な利益と成長に繋がりやすいです。